12月2日に東日本・中部レインズから正式告知のあった機能追加の件。その中で、売主にID・パスワードを付与して、レインズ登録内容や取引状況を確認できる機能はそれなりにインパクトがあり、情報の透明性の観点からは前進だと思います。2016年1月4日から始まります(近畿レインズでも2016年1月6日より開始)。
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目次
1. 今回追加された機能。
今回追加された機能は以下の3つです。
・ 物件情報項目に【取引状況】を追加。
・ 登録された物件情報と【取引状況】を売主が直接確認できる。
・ 住宅性能・品質等に関する情報項目を追加。
2. 物件情報項目に【取引状況】を追加。
売り物件の「専任」または「専属専任」媒介契約物件について、物件情報項目【取引状況】が追加されます。細かい部分は端折りますが、レインズの言う【取引状況】は以下の通りです。
【取引状況】には、(1) 公開中 (2) 書面による購入申込みあり (3) 売主都合で一時媒介停止中 の3つがあります。
(1) 公開中
原則として客付業者への紹介を拒否できません。
(2) 書面による購入申込みあり
原則として客付業者への紹介を拒否できます。但し、申込みは書面(文書・メール・インターネット等)が必須。、
(3) 売主都合で一時紹介停止中
売主の意向、了解を得た上で、表示できます。
3. 登録された物件情報と【取引状況】を売主が直接確認できる。
(1) 売主が確認するための専用URL、ID、パスワードが発行される。
「専任」または「専属専任」媒介契約の売り物件に関しては、レインズへの登録義務があり、売主に「登録証明書」が交付されることになっていますが、この登録証明書に専用確認画面にアクセスするためのURL,ID、パスワードが記載されるようになります。
(2) 確認できる物件登録内容。
確認できる物件登録内容は下記の通りです。
・ レインズに登録されている物件情報
・ 図面
・ 取引状況(および取引状況の補足)
4. 住宅性能・品質等に関する情報項目の追加。
こちらは任意登録項目。今回この部分は端折ります。
5. 特に売主利益保護の観点からは一定の前進ではないか。
今回の機能追加の目玉は、何といっても、売主が直接レインズにアクセスして取引状況を確認できることでしょう。
媒介を依頼した不動産業者が、他の不動産業者(客付業者)に対して、物件の取引状況をどう説明しているのかをある程度自分の目で確認できるようになるからです。
これまで、レインズに公開されている物件への客付業者からの問い合わせに対して、買付が入っているわけでもないのに「商談中」などとして紹介を拒否する、いわゆる「囲い込み」の問題が指摘されていました。今年は結構はっきりとした報道もありました(大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン)。
典型的なのは、他の業者からの客を付けさせないように問合せに対しては「商談中」として紹介や買付を断り、一方で売主に対してはこれらの反応を知らせないで、あくまでも「両手仲介」を狙うというやり方です。
そもそも、媒介を依頼している業者が問合せ業者にどう対応しているのかは営業マンからの報告を聞く以外方法はありませんし、レインズの登録内容は宅建業者しか見ることができません。極端な話、レインズに一旦登録して売主に「登録証明書」を発行し、その後こっそりレインズから物件を削除したとしても売主にはわかりません。もちろんこれは業法違反ですが。
それに対して、今回の機能追加では、そもそも物件の登録が維持されているのか、紹介可能な状態だと公称されているのかどうかについて、売主がほぼリアルタイムに把握することができます。
つまり、業者は売主に嘘がつきにくくなるということ。
こういう施策をしなければならないこと自体、この業界の負の部分を明らかにしているようなものですが、いずれにせよこれまでよりは前進したと言えるのではないかと思います。
もちろん、【取引状況】のステータスを「公開中」としつつも、電話口では「商談中」などと対応する場合もあるでしょう。そもそもこれまでもレインズ登録されている物件は「紹介可能」が建前だったんですから。この場合、売主には「公開中」に見えるので、この業者の対応は売主にはばれないかも知れません。でも一方で、物件情報がその後も「公開中」のままだと、対応された客付業者が「囲い込みだろ」ということで、レインズにチクるということはありうるわけで、そういう意味でも、やはり嘘のつきにくさ、は一定確保される気はします。
まあ、抜け道はいくらでもあるでしょうけどね。
6. 情報の透明性が大事。
両手仲介自体の是非が議論されることもありますが、両手仲介となるパターンには色々あるでしょうし、それを一概に悪だということはできないと思います。
問題は、両手かどうかということではなく、嘘は良くないということ。倫理的にというよりも、それが厳然と売主利益を害する場合があるからです。
売りに出してから時間が経過するにつれて値下げを余儀なくされた売主が、実際には満額で買付を入れたがっている客が随分前にいたことを知ったらどう思うでしょう。満額で「片手」になるよりは、値下げになっても「両手」になる方が業者の売上は大きい。売主の利益と媒介業者の利益が一致しているとは限らない中で、「嘘」が存在しやすい仕組みがあり、実際に「嘘」がある、ということはやはり大きな問題だと思います。
そういう意味では、「嘘」がつきにくい仕組みを入れていくというのは良いことだと思います。
ちなみに、少し前のソニー不動産とヤフーの「おうちダイレクト」の記事では、買いたいと思う人からの反応「買いたいリクエスト」を「マイページ」でダイレクトに確認することが出来るのは良い面だと書きました(新しくて古い「おうちダイレクト」のソニー不動産とヤフー)。
「おうちダイレクト」は新手の囲い込みでは?という見方もありますし、モヤモヤしたところは多々ありますが、それでも現在使える技術・手段を使って、情報の透明性を追求していくことは、この業界にとっても必要なことで、そういう意味では注目できる面もあります。
ほぼ時を同じくして始まる、レインズにおける売主の取引状況確認。めんどくさいと感じる向きもあるかも知れませんが、情報の透明性を推進するとういう意味では良い施策だと思います。
あくまで第一歩だとは思いますが。
※ 尚、今回の機能追加の詳細は、レインズのトップページ(https://system.reins.jp/)のREINS告知事項に掲載されている「ステータス管理」機能導入のお知らせ(東日本・中部圏)」(pdfファイル)で見れます。
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